Riley’s blog Special

誰か源氏香を教えてくれ~

東京工業大(東京科学大)数学系院試体験記(代数系)

はじめに

Riley(ライリーと読む)です.この記事は東京工業大学(東京科学大学)の理学院数学系数学コースの修士課程の2025年度(2024年8月16日実施)入学試験の体験記です. 

 

 

私について

はじめに記事の筆者である私の院試に関する自己紹介などをします.

私は院試受験当時は東工大理学院数学系学士課程4年の人間でした.専門は代数系です.2025年度入試を同じく代数系で出願し受験して先ほど合格を確認いたしました.やったね.

 

記事の構成

とりあえず院試に関係する話が出てくる私が学士2年生であった2022年12月あたりから院試の合格発表である2024年9月4日まで,時系列で体験記を書きます.書く内容は院試や数学に関する事項です.

 

体験記本文

2022年12月(学士2年)

このころから院試というものを経て大学院に入学するか学士課程を卒業した後就職して小銭稼ぎをするかというどちらの道に進むかを悩んでいました.実はこのときは院進の意思はあんまりありませんでしたアクチュアリー試験でも受けて世の中の役に立つ仕事をしたいお!などと考えていました.

 

2023年4月あたり?(学士3年)

3年生になったわけですがこのころになるとアクチュアリーの勉強が楽しくないことに気づいてしまい友人とやっていた勉強会も自然消滅していました.このときは院試をやることになるなどと考えていませんでした.みんななんとなく院に行くらしいじゃん?くらいに考えていました.学部入学の高校生向けのパンフレットにも院進率9割!とかうたっていた気がするし.

 

2023年8月(学士3年)

Twitterで同じ数学系の先輩が院試を受けていること,数学系同期の間でどうやら数学系にはA日程(いわゆる推薦入試みたいな)の制度はなく,皆一律にB日程(いわゆる一般入試みたいな)を受けて合格しないと大学院には行けない,的なことを聞いたこと,などがあって大学院に行くには院試受けなきゃならんのだなあと院試を意識し始めました.

また,このときに腕試しにと平成10年度の院試の午前を解いてみました.時間は計っていません.難しかったですね.めちゃめちゃ悩んだり書籍などをカンニングしたりしてようやく解けた,みたいな感じだった気がします.線形代数,解析,位相空間の基本的な知識やテクニックが抜けていたのでしょう.

そしてこの時期に同期の数学系の間で院試を解くのが流行っていて同期のDiscordでは院試の話題が多かったです.院試対策会の発足もこの時期といっていいでしょう.Discordは院試対策会用に友人が新しく作ってくれて自分もそこに参加しました.

 

2023年9月(学士3年)

先輩たちの合格報告を目の当たりにしました.つよい.

また,この時には完全に就職のことは頭にありませんでした.3年のこの時期に就活してないのは遅いらしいですしね.数学系は大雑把に代数系,幾何系,解析系の3分野に教員や研究室が分類されていて学士3年の後期に分野を決めて4年に研究室に所属します.この時期には自分はどこに行くか決まっていませんでした.ただ少なくとも代数系にはいかないだろ,と思っていました.3年前期の代数系の講義である代数学第1,代数学第2の点数がかなり低かったからです.(単位は取得できた)

 

2023年10月(学士3年)

3年の後期が始まりました.東工大はこの時期に研究プロジェクトという講義名で研究室に所属する前準備的なのをやります.系によってこれが教員による研究室紹介になるし実験の体験とかになるらしいですが,数学系は教員による研究室紹介です.毎週立ち代わり入れ替わりで数学系の教員が研究室の紹介などをしてくれます.実はこのとき幾何系に進もうと考えていました.簡単に理由を説明すると前期の幾何学の講義でちらっと先生が話してくださった数学的概念*1に興味を持ったからです.ゆえに12月までの研究室訪問では主に幾何系の先生にメールでアポを取って面談に行きました.

ちなみに院試はというと対策会は一旦止まっていたような気がします.次に始動し始めるのは3月あたりだったような?

 

2023年11月(学士3年)

研究室訪問はトポロジーの先生をメインに幾何の先生の所にたくさん行きましたが実は解析系の先生の面談にも行きました.個人的にその先生の話は面白いと感じていたので話を聞きたいと思ったからです.

そして代数系にも面談に行きました.これは仲のいい友人が誘ってくれたからです.

 

2023年12月(学士3年)

さて,研究プロジェクトや研究室訪問を経て志望研究室調査をしてその結果が発表されます.私は一番最初に面談に行ったトポロジーの先生を第1志望に,微分幾何の先生を第2志望に,友人と面談に行った代数系の先生を第3志望にしました.

ここまできてなぜ私が代数系に行くことになったのか?その転機が訪れます.

なんと第1志望は受け入れ可能人数が3人に対して4人志望していました.話し合いやじゃんけんや殴り合いで1人は第2志望の研究室に行くことになります.しかし私はこの段階で第2志望の研究室に行くことは避けたいと考えています.理由は志望者が私1人であったからです.1人でセミナーをやるのはきつい.院試のこともあるから顔を合わせる仲間は欲しいと考えたわけです.

一方そのころ,私の友人は僕の今の指導教員(代数系)を第1志望にしていて同じく1人セミナーの危機となっていることを知ります.そこで私は第1志望のトポロジーの先生は諦めて今の指導教員に無理言って面談をさせていただくことにしました.

志望結果公表前に飛び入りで面談をしたわけですがそのときの指導教員のお話がとてもワクワクするものでした.何がワクワクするかって,お話のうち理解できるのが日本語であることくらいであることです(笑).いや,もはや日本語でもない単語もあった.とにかく代数系には縁がないと思っていた私ですが,この面談で代数系に行くことが私の運命だったか,と傲慢にも考えるくらい興味がわいてきました.

とにかくこの2023年12月という時期は私のキャリアに大きな転機があった月でしょう.代表の先生に連絡して第1志望を代数系にして今の指導教員の研究室への所属の意思を伝えました.

これは余談ですが不躾なことに私はいくつか数学系の講義を履修していません.2年の幾何学概論とか3年の複素解析続論とか.でも今思えばすべて履修したのは代数系だけでしたね.

 

2024年1月(学士3年)

今の指導教員の研究室への配属が決まったので同じ研究室の先ほどの友人が,もう1人代数系の友人を誘ってきてくれてこの3人でAtiyah-Macdonald 可換代数入門のゼミをやろうじゃないか,と言ってくれました.いわゆるアティマクです.演習問題は飛ばして本文を丁寧に読み進めるゼミを3月末までに終わらせようという感じでした.

個人的な話になりますが,私は情弱であったかつ2年の前期あたりに大きな病気にかかって入院していたのもあってこういった講義外のゼミやら数学団体の所属やらはほとんどしていませんでした.個人的に読み進めた数学書なども皆無でしたね.この友人とのアティマクゼミは私の人生初めての読了までしっかり進めることができた本です.担当を決めるなどして同年3月の中旬あたりに本文を読み終わりました.

院試は午後の問題が専門の問題ですが,アティマクを読んでおいてよかった~と思う機会がたくさんありました.代数系の後輩は今からでもアティマクを読もうね.

そして滞っていた院試対策会が再始動していきました.2023年度入試からさかのぼって1週間に1年ずつやって解答を出し合おう,という感じでやりました.

 

2024年4月(学士4年)

3月にアティマクを読み終わり,4年生になりました.指導教員と友人と相談してKunzさんのIntroduction to Commutative Algebra and Algebraic Geometryをセミナーで読む本として選びました.代数幾何の本ですが代数幾何の先生の中ではあまり知られている感じはありませんでしたね.ハーツホーンが有名どころですが,今思えばハーツホーンにすればよかった気がしなくもない.*2

 

2024年5月(学士4年)

セミナーは友人とおよそ2人で回していたので1人当たり2週間に1回の発表でした.院試対策会も順調にさかのぼっていった気がします.このときはまだ午前しかやってないですね.2015年度あたりまでさかのぼっていたんじゃないでしょうか.

個人的にはホモロジーかっこいいな,とか思って枡田先生の代数的トポロジーという本を読んでいました.院試の対策にもなればいいなと思ってホモロジーやってましたが結局ホモロジーは途中でやめたので趣味ですね完全に.

 

2024年6月(学士4年)

院試対策会はさかのぼりすぎて傾向が違くないか?となってきて人が減っていきました.全員で寄ってたかって解答を作ったのは2013年度あたりまでだった気がします.また,この月の末に指導教員にお願いしてセミナーをストップし,院試勉強に時間を捧げることにしました.

また,このあたりから午後も解き始めていました.アティマクゼミをやった友人と計3人で勉強会を開いて午前午後ともに解き進めていきました.

 

2024年7月(学士4年)

同じくアティマクゼミをやった3人で午前午後を解き進めていきました.一緒に勉強しているときはさかのぼるというよりもすでにやった午前問題の解き直しのようなものをしていました.午後の問題はさかのぼる形を取りました.

 

2024年8月(学士4年)

前日よりも前はより昔の問題に手を出していました.時間も計りました.平成16年度の問題とか.個人的な評価ですが平成20年度くらいは午前はそんなに難しくないけど平成12,11,10年度は比較的難しいようです.初めにやった問題が平成10年度でしたがあれは今になっても難しい問題なのだなあと思いましたね.

 

2024年8月15日(院試前日)

これより1日前から早起きして大学に行こうぜチャレンジを仲間としていました.内部生だからできることですね.院試は9:00開始だったので8:30くらいに大学に着くというようなことをしていました.この日は大学で2024年度の院試の午前を時間を計って解き直しました.あとはいろいろわからなかった問題を友人に共有するなどして解決しました.

 

2024年8月16日(院試筆記試験当日)

無事に予定通りの時刻に大学にたどり着きました.ただこの日は台風が直撃していたんですよね.試験中ものすごい暴風雨でした.

試験前

友人が存在することを確認して後はいつも通りです.試験前に配られた試験の紙が透けて問題が見えてしまっていたのはウケましたが.

試験中(午前)
  1. 線型代数
  2. 線型代数
  3. 位相空間
  4. 解析学
  5. 解析学

というラインナップでした.まあ,6割くらいですかね感触としては.よくできたわけでもできなかったわけでもない,という感じでした.位相空間論だけは自信をもって完答しましたが他は半分くらい何とかもぎ取ったかなという感じ.ま,こんなもんで受かるやろ,という謎の自信はあった.

試験後(午前)

午前の感想を2,3友人と言い合った後は本館地下の生協でお昼を買って食べました.現実逃避をしたい,とかいって食堂をぐるぐる友人と回っていましたが今考えると完全に不審物ですね.

代数系の友人と代数の最終確認をしあって午後の専門に臨みます.

試験中(午後)

やはり問題が透けて見えてしまっていてウケました.それはともかく代数は運よく今年は3題出題されました.例年は代数は2題出題されて2題を選択するので代数勢に選択の余地などないですが今年は優しいようです.

と思ったのもつかの間,1番の環論の問題は(1)はかなり簡単だが(2)がなかなか方針が立たない.いったん諦めて2番に行きます.

しかし2番のガロア理論,見た瞬間にこれは手を付けてはいけないなと思い見切りをつけます.あれはあとから考えても試験中に突っ込んではいけない特大地雷です.

3番は(1)(2)は簡単です.私は(2)でミスったが.(3)は表現論の問題ですが実は表現論のことはほとんど知らなくても解けてしまします.後からわかったことなのでもちろんこれも解けなかった.

ここまでの過程で試験時間は40分を経過していました.考えれば何とかなるだろうと思った1番の(2)のネーター性ですがこれがどうもわからない.結局試験中にはわからなかったがネーター性とはなんたるかについては俺はわかっているぞ,ということをアピールする解答だけ書いて試験は終了.

試験後(午後)

代数系の人と「え,代数地雷では?」という会話をして英語の試験に臨みます.

試験中(英語)

超簡単でしたね.高校の期末試験くらいな感じだろうか.問題数も少ないしそれより楽かも.ここまでくれば消化試合みたいなもんです.

試験後

全ての筆記が終わって構内の講義室を借りて内部生で筆記の解き直しをしました.面接で聞かれるかもしれないからね.

ということで試験後と次の日にかけて怒涛の解き直し会が行われます.このときに分かったことですがやはり2番のガロア理論はウルトラ地雷だった.

 

2024年8月17日(筆記試験の次の日)

面接の前日でもあり面接に進める人間の発表日でもあるこの日.

前日の筆記試験の解き直しを行いながら17:00の面接に進める人間発表を待ちます.

同じく大学構内の講義室を借りて黒板を使って解き直しをして私はそれをPDFにまとめて院試対策会のDiscordに共有しました.超精神が削がれましたね.頭も胃も痛かった.

そして17:00.無事に面接に進めることが分かりほんの少しだけほっとしました.

 

2024年8月18日(面接)

私は代数系で午前に呼ばれました.10:00くらいに開始だったので9:00ぐらいに行って午後の面接の人と面接で聞かれるであろうことを少し確認して待合室に行きました.

待合室で大声で「東大のA問題は簡単だ!」という声が聞こえてきてクソうぜえと思いながら自分の受験番号と名前が呼ばれました.たしか4番目だった気がします.

面接の内容はあまり他言しない方がいいと考えましたのでここには詳しくは書かないことにします.待合室には戻らずそのまま帰るよう言われました.

 

2024年9月4日(合格発表)

めちゃめちゃドキドキしました.もし落ちていたら文句は言えないなあとか内心考えていたくらいには落ち度がある出来だったので.発表は15:00.ですが東工大,フライングしましたね.14:55くらいにはホームページに合格者受験番号があがっていました.

出願登録のページは予定通り15:00に合否確認のボタンが押せました.

ということで無事合格でした.受かってるならギリギリだろう,と弱気だったのもあり合格が分かった瞬間はガッツポーズしました.

 

伝えたいこと

集合知は偉大.これにつきる.学部入試は赤本とかあるしこの時代1人でも情報集めは何とかなるだろうけど大学院入試は赤本みたいなやつはないので院試対策会を開いていろんな人の解答に触れて,いろんな人のサポートを受けるということで合格することができたのだなあとしみじみと感じます.同期はじめ周りの人間には感謝してもしきれない.特大の感謝を送りたい.

 

質問など

私に対して質問などがあればTwitterのDMで主に受け付けます.@Na2COOH_2で調べれば出てくる.

 

他の人間の院試体験記

公開されている東工大数学系内部生の院試体験記のうち私が知る限りのものです.公開されているので各人への掲載許可は特段取っていません.

2022年度入試

  • 解析の先輩

2023年度入試

  • 代数の先輩(京大のRIMSに行った人です.)
  •  代数の先輩
  • 幾何の先輩
  • 解析の先輩

 

2024年度入試

  • 代数の先輩
  • 代数の先輩
  • 解析の先輩
  • 解析の先輩

 

2025年度入試

  • (一応)代数の同期
  • 代数の同期(一緒にアティマク読んだうちの1人)
  • 代数の同期
  • 代数の同期(一緒にアティマクを読んだうちの1人)
  • 幾何の同期
  • 幾何の同期
  • 幾何の同期
  • 解析の同期(多分対策会発起人)
  • 解析の同期

 

最後に

院試,かなり苦しんだし理不尽感否めないので頑張って解答まとめて後輩に渡そうと思う.

 

追記:東工大数学系院試午前の1998年度から2025年度の解答をまとめた完全解答PDFを作成しました.欲しい人は私に連絡ください.(Twitter ID:@Na2COOH_2)

*1:エキゾチック構造というもの.多様体Mに対して多様体XであってMとXは位相同型であるが微分同相ではないとき,この多様体XをエキゾチックMとよぶ.例えば3次元ユークリッド空間R^3に対して同相だが微分同相でない多様体があればそれをエキゾチックR^3という.驚くべきことにnを正の整数としてエキゾチックR^nはn=4のときに限り存在する.これを証明したドナルドソンはフィールズ賞を受賞した.

*2:Kunzはまず体裁が整っていなかった.証明終了のマークがあったりなかったりするし,お気持ちなのか厳密な話をしてるのかわかりにくい記述も多い.おまけに読んでいる人間もそう多くない.ハーツホーンは世界的に有名な代数幾何学のテキストなのでわからなくても誰かに相談できる.と思う.

テスト

Large Heading

Medium Heading

Small Heading

Normal

箇条書き

番号なし

  • 箇条書き1
  • 箇条書き2
  • 箇条書き3

番号あり

  1. 番号
  2. 番号
  3. 番号
リンク

 

  1. google

  2. yahoo.com
  3. ???

 

LaTeX打てるんか?

わからん.HTMLでLaTeXを挿入する方法があればいいんだけどね.